太郎に会いたい

「太郎」は2007年に道北の初山別村の海岸で保護されました。船にでも巻き込まれたのか、前足の片方がなく、血にまみれ、お腹の中はビニールで圧迫され、両目ともずっと閉じたまま身動きする事もありませんでした。けれど、小樽水族館で手厚い保護を受け、わずか4.8キロの小さかった体も100キロにまで成長しました。

桃子先生から太郎の話を聞いて、年長はと組の子ども達は「太郎に会いたい!」と思うようになりました。お泊り会で、太郎のいる小樽水族館に遊びに行くことになっているのです。お泊り会の準備を進める日々の中で太郎のことが頭をよぎります。

さて、水族館はどんなところでしょう。

「すいぞくかんにはクラゲもいるよね~」

「おおきい『すいそう』があるんだって!作ってみよう!」

亀には右手がありません。可愛そう……。

新聞紙で形を作って、太郎の完成!でも、やはり右手がないのが気になります。

部屋のすみっこで亀の本を見ながら、何か作っているOちゃん。

「どうかな?これでいい感じかな?」ラキューで右手を作ってみました。そうしている間にもお泊り会の準備はどんどん進みます。

「すいぞくかんのかめ」「かめのあし、しんぱい」「あおばと(観光船)で、てをみつけたい」「すいぞくかんのおいしゃさん……」太郎への想いが増していきます。

いよいよその日が近づいてきたので、お泊り会の朝ごはんの食材を買いにお出かけです。

「ビニールのふくろは、もっていかない!かめやさかながたべたらかわいそうだからね。」「え、そんなのかえばいいよ。ビニールぶくろいっぱいうってるもん。」その言葉に反応したTちゃんが熱弁をふるいます。「だからエコバッグっていうすてきなものがあるでしょう!ママがそういってたよ!」「わかった…。」そんな話し合いを経て、買った食材は自分たちのリュックに入れることにしました。

「ビニールのゴミがおちていたら、ひろわないとダメだよね。」太郎が教えてくれた大事なことが、少しずつ生活の中に取り込まれていきます。「はやくたろうにあいたいね!」「うみにいったら、たろうのて、さがそうね。」